noteで、
「評価制度、逆効果です」
と書いたとき、
人事担当者から、怒られるかと思った。
逆だった。
DMで一番多かったのは、
「うちもです」
という、人事担当者からの、ため息だった。
評価制度は、
「頑張った人を、ちゃんと報いるための仕組み」
として、設計されている。
少なくとも、設計上は、そうだ。
ところが、
20年、人事の現場にいて、私が見てきたのは、
「評価制度を導入した会社ほど、優秀な人から先に辞めていく」
という現象だった。
なぜ、こうなるのか。
3つに整理した。
ひとつ目は、公平を装うことで、本質が見えなくなる。
評価制度は、
「公平」という言葉を、必ず、看板に掲げる。
5段階評価、相対評価、360度評価。
形を整えれば整えるほど、
公平に見えるようになる。
ところが、現場で起きているのは、
「制度の公平さ」と「現場の納得感」のズレ だ。
例えば、5段階評価で、
部下に「3」をつけたとする。
制度上、「3」は「期待通り」を意味する。
でも、本人は、
「半年、本気で頑張って『3』なのか」 と感じる。
頑張った半年が、
「期待通り」というラベルで処理された瞬間、
その人の心が、一回、冷える。
公平を装うほど、
「自分は、ただの数字だ」 と感じる人が増える。
ふたつ目は、数字化することで、感情が消える。
評価制度は、
人を、数字に変換する作業 でもある。
数字にすると、扱いやすい。
ボーナスの計算もできる。昇給の根拠にもできる。
でも、現場の本当の頑張りは、
数字には、絶対に乗らない。
「あの夜、社員のために、ひとり残って資料を直した3時間」
「クライアントのクレームを、自分が悪くないのに、頭を下げて収めた朝」
「後輩が泣いていたのを、業務の合間に1時間、聞いた火曜日」
これは、
評価シートの、どこにも書く欄がない。
評価シートに乗らないものほど、
実は、組織を支えている。
それを、評価制度は、構造的に見落とす。
みっつ目は、一律化することで、優秀な人が辞める。
評価制度は、
「全員を、同じ物差しで測る」 という発想から始まっている。
これは、合理的に見える。
でも、優秀な人にとっては、
「自分の価値が、平均化される装置」 に感じる。
優秀な人は、
「自分は、他の人とは違う動き方をしている」と思っている。
実際、違う。
それを、同じ物差しで「3」にされた瞬間、
「ここでは、評価されない」と確信する。
そして、
ボーナス支給の翌週に、辞表が出てくる。
ここまで書いて、
「じゃあ、評価制度なんて要らないのか」
と思う人もいるかもしれない。
私の答えは、
「制度は要る。でも、最終手段だ」 だ。
評価制度の前に、
もっと安く、もっと効くものがある。
それは、
「日常の、半年分の声かけ」 だ。
「先週の資料、助かったよ」
「クライアントに頭下げてくれたって聞いた、ありがとう」
「最近、後輩がよく君に相談に行くらしいね」
これを、半年で、
100回、上司が部下に言えているか 。
それだけで、評価制度の「3」が、
「期待通り」ではなく、「ありがとう」に変わる。
そしてAI時代になって、
これはもっと加速する。
なぜなら、
評価制度の機械的な部分は、AIで代替される。
数字の処理、ランキング、給与計算。
全部、AIで瞬時に終わる。
つまり、
「制度を運用する作業」は、AIに移る 。
人事担当者と、現場の上司に残るのは、
「日常の声かけ」だけ だ。
評価制度を変えても、人は変わらない。
変わるのは、離職率だけ。
これが、20年の人事の、私の本音です。
経営者のあなたへ。
評価制度の改定に、3ヶ月、外部コンサルに支払う前に、
「半年で、社員に何回『ありがとう』を言ったか」
を、上司全員に、聞いてみてください。
たぶん、
そっちが先です。
私自身も、
50歳になって、ようやく、
「ありがとう」の重さを、本気で理解し始めています。
それは、
評価制度では、絶対に教えてくれなかったことです。

